DAC基板作成


【コイルの製作】

コイルはオーディオにおいて嫌われるパーツの1つといわれている。事実、パワーアンプのパラ止めRFCでさえ音質劣化するとして嫌われているのである。パワーアンプマニアでコイルが嫌いな人は間違いなくスピーカについて無頓着なのだろう。ネットワークにはRFCよりも遙かに大きなインダクタンスが使われているのに、である。

コイル性能の目安としてQがある。QはQualityの略で、簡単にいえばどのくらい理想的なインダクタンスとして動作するか、ということを数値的に表す。理想的なコイルは電力を損失しない。しかし、実際のコイルは電力損失がある。それは銅損と鉄損によって決まる。銅損はコイル線材の抵抗により発生する。この点からは線が短く太いほど良いコイルができる。鉄損はコア材の渦電流が決定的である。この点からは空芯がもっとも良いといえる。しかし、空芯で4mHものインダクタを得るには相当の巻き数が必要である。(そうなると銅損が増える。)つまり、銅損と鉄損はトレードオフの関係にある。また、長い線を巻くのは音質的にも作業的にも厄介である。

コアは内磁回路(磁力線が外に出ない)であるトロイダルが外部の影響を受けにくく、市販品も比較的豊富であるため採用した。
事前の実験では、#77材(μs=2000)のトロイダルフェライトコア(T82-77)を使ったコイルで好結果得ていたため、これを使った。
フェライト材は2種類あり、導電性の有無がある。#77材は導電性があるため、鉄損が大きく利用周波数としては1MHz程度までのようだ。しかし、オーディオ帯域ではこれは問題にならないだろう。ただし、線を巻く前にコアにテーピングをする必要がある。テーピングはサージカルテープ(医療用テープ)が最適で、薬局で入手する。

LPFの設計にてインダクタンスが4mHであることがわかっているので、巻き数を求める。
コイルのインダクタンスは教科書的には
 
H=αn^2
α=1ターンのインダクタンス
 n=巻き数

で簡単に求められる。トロイダルコアの場合、αはAL値とよばれコアの仕様になっている。
T82-77のAL値は1170nH/t^2なので、巻数は約58回となる。実際にはコアの誤差などで5%程度はずれる。
線材として直径0.6ミリのウレタン線を使用した。入手出来ればOFC材の方が良い。
コイルはコア全体に均一に巻くことが求められるが、これはかなり難しく、いきなり巻いてもうまくいかない。このため、コアに45度間隔でマジックを用いて印を付けて8分割し、1分割ごとにピッチを調整してゆく。若干ピッチがずれても、コイルをしごけば修正できる。
最後にコイルをしごき、全体的にピッチが等間隔になるよう調整する。この段階でリードを10cmほど残し切断する。

コアには温度係数があり、巻いた直後だと体温でインダクタンスが変化しているため、10分程度寝かしてインダクタンス測定する。過不足を調整(さらに巻くあるいは解いて再度ピッチ調整をする)後、高周波ニスで固める。高周波ニスが無い場合エポキシ接着剤でコーティングしても良い。



【基板の製作】

基板の作成についてはインタフェース基板と同様の注意をはらう。(特にGNDがよけいなピンに接触していないか確認する。)

DACのケミコンにはBlackGateのNシリーズを使用、これは無極性ですがいわゆる”超電解”になるような極性にしている。
出力のカップリングには、若松で売っているSY-CAP(絹糸を巻いてダンプしているらしい)を使用。
このコンデンサにこだわったわけではないが、他のフィルムコンはでかすぎるので。
LPFのコンデンサは双信のSEコン。DACから差動アンプまでのコンデンサはディップドマイカを使用。
抵抗はDAC->LPF入力までを金属皮膜抵抗、LPF->出力までを理研RMGと使い分けている。
LPFまでは高周波信号(1.4MHz)成分が多く、カーボンよりは金属皮膜の方が適していると思われる。(皮膜なので表皮効果に強い。)
また、差動部の抵抗誤差は歪みにつながるため、この点でも精度の高い金属皮膜のほうが適している。
コイルの固定にはインシュロックタイを使用した。ただしキツキツに締めないこと。コアにストレスを与えてはいけない。

オペアンプを含めすべてのDIP ICにはソケット(丸ピンタイプ)を使用。
ミュートリレーは富士通のFRB240シリーズを使用。(ストックが100個くらいあるため)
アナログ部とDAC部のGND接続にフェライトビーズ(FB101)を2つ使用。

完成したDAC基板
4つの2回路入りオペアンプはそれぞれ1回路しか使っていない。これは、パターンレイアウトの都合による。
DACからラインドライバまで一直線上に配置されている。また、可能な限りLRが対称になるようにしている。

DAC周辺のアップ。
パスコン(BlackGate-N、積層セラミック)とLPFとしても動作するアナログ段へ4つのパス。
高周波部分のコンデンサはディップドマイカ。

アナログ段のアップ。
コイルはナイロン製の結束タイ(インシュロックタイ等)で固定する。タイはきつく締めないこと。
π型フィルタ以前は金属皮膜抵抗、π型フィルタ以降は理研のRMGシリーズと抵抗を使い分けている。
オペアンプのパスコンとしてBlackGateと普通のマイラコンデンサを使用。
出力のカップリングコンデンサとして、SY-CAP 10uFを使用(かなりでかい。)
アナログ段は比較的シンプルだ思う。



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