アンテナチューナAH4


回路図

残念ながら回路図はついていないので、基板をトレースしてみた。制御回路はシールドボックスの中に入っていて不明であるが、RFの通り道はほぼトレースできた。基板からトレースしているので間違いがあるかもしれない。 (後述のサービスマニュアルに回路図あります。)

特徴的なのは、チューン時はATTをかまして輻射電力を減らしている(カタログスペックで0.3ワット)点だ。こうすると、他の局へかける迷惑が減少するということ以外に

・高出力でミスマッチだと異常な高電圧、高電流が出て部品(特にリレー)や基板が痛むことの対策
・チューン中ミスマッチだとトランシーバのSWR検出が働いてしまうことへの対策

などがあると思われる。しかし、回路図では省略しているがATTは1W程度のチップ抵抗を合成しているので、ハイパワー送信するとATTが焼けてしまうという問題がある。しかしそこはソフトで何とかしているようだ。規定の出力範囲内に入っていないとチューンしないようになっている。回路をみると、ATTの入力からパワー検出しているようにも見える。ハイパワーでチューン拒否しても一瞬はATTが喰うかもしれない。

ネットワーク回路に目をやると、コイルは9個直列になっており、これで2^9(512)通りの可変インダクタとなっている。対する可変コンデンサは8個で出来ておりこれは256通りである。コンデンサは値を読めたので回路に記載しておいた。セオリー通り段ごとに2倍の掛け率になっている。コイルは値が読めないが、これもおそらく2倍になっているのであろう。256通りの分解率といってもピンとこないかもしれないが、バリコンの回転角は180度であるから、バリコンを1度以下の回転角で制御していると考えれば十分な分解能であることが想像できると思う。このコンデンサはコイルに対して入出力どちらにも接続できるようになっている。出力側には専用のコンデンサが4通りある。これが具体的にどのように動作しているのかはよくわからないが、インピーダンス整合とアンテナエレメントの共振を兼用しているはずである。整合と共振を考えるともっと多くの部品が要りそうな感じがするが(出力側のコンデンサ分解能ががもっと欲しい)、うまく動作を把握して部品数を減らしているのだろう。出力側のリレーは2個直列にして耐圧を稼いでいるようだ。またこの部分はリレーでホット側を切り替えるようにしている。これはおそらくコールド側を切り替えるとオープン時にハイZとなってRF高電圧が出るための対策と思われる。アンテナ回路はハイZに整合すると非常に高い電圧が出てくるので、部品も高電圧に耐えるものが使用されている。リレーもサージ耐圧8kV品である。

取り付け

水密構造耐候性とあり、どんな風にでも取り付け出来そうだが、実は取り付け方向は自然に決まってくる。マニュアルにはまったく言及されていない点だが、このボックスは完全な密封ではなく、空気穴があけられている。これは完全に密封してしまうと温度差や気圧差などで空気の出入りが発生し、予期しない点から雨水などが浸入してしまうためだ。このため、雨が入り込まないように空気穴をあけてあるのだが、マニュアルには全く言及されていないため、下手をすると空気穴に雨水が入ってしまうかもしれない。

で、問題の空気穴だが実は背面の銀色シールの下にある。このシールのシリアル番号記載の付近に溝穴が3つある。これはシール下に溝が掘られており、シール中央で本体内部と接続されているのだ。基板をはずしてケース内部をよく見るとフィルタをつけたような穴が3つみられ、ここと接続されている。従って、ケーブル引き出し口を天空に向けて設置するとひどい目に遭うかもしれない。基本的にはガイシ部分を上にするか、平らにして横に設置するかどちらかであろう。

さらにもう1つ問題なのは、アース端子がパッキングなしでケースにつけられていることだ。このためこの隙間から雨水が入るまではいかなくても、湿気が侵入する可能性がある。現に当方のものはこの部分の内部金具に錆が出ていた。これは薄いゴムなどでワッシャを作り、共締めしてしまえば解決する。あとは内部にシリカゲルを放り込んで置けば、多少湿気が入っても安心である。

内部LED

基板にはケースを開いたまま通電しない限りまず気づかないと思われるLEDがある。電源コネクタ近くの赤色LEDはどうもチューン状態で点灯しているようだ。同軸コネクタ近くに緑LEDが2つあるが、これはよくわからない。チューン中に多少点滅する。せっかくチューンで点灯する信号があるのなら、これを引き出してくれればありがたいのだが。

コモンモードフィルタ

よくあるコモンモードチョークのフェライトコアがなんとかケースに入るので、あらかじめ装着したほうがよいと思われる。これは給電線をアンテナ代わりにしないためにも有効で、I対策にもなる。上図でケース内にある白い物体はシリカゲル。

給電線はチューナより50センチ程度で切断し、中継コネクタを経て接続するようにしている。これは、取り外しや点検時に取り外しやすいため。上の画像でも明らかなように、コネクタはケース内にケーブルを引き込んでから半田付けしているので、中継がないとケーブルを切って外すことになってしまう。Mコネの中継には単なる中継のほか、避雷器などを入れてもFBである。電波法でも短波のアンテナには避雷器を要求しているはず。

サービスマニュアル

英文SM、ネットで見つけました。おいておきます


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Updated: 2016/08/03