FT-102ジャンク修理その2


またまたジャンクの102を修理しました。2台目です。まだ手元に1台別のジャンク102があります。新品に近い102もあるので、計4台になってしまいました。一台手放すかもしれません。102の修理はだいたい把握しましたので、修理調整のご相談にも応じられると思います。

状態


中古屋の放出品。中古屋が再販売にあたってメーカに修理・点検を依頼したが拒否されたらしい。
落下などによる大きな外観上のダメージはないが、傷多くネジがかなり抜けている。また、M3ねじ穴などにタッピングビスがねじ込まれていたりと、元オーナの手荒な扱いを受けたようだ。

内部の電源回路周辺にわけの分からない改造の跡有り。基板のスタンドオフ端子(ピン)の半田付けはほぼすべてがジャック?のようなもので無半田で取り外せるようになっている。改造の半田付けが下手くそで、絶縁などもいい加減。ファイナルの高圧配線までがピンジャックのような端子になっており、低圧ケーブルが継ぎ足してある(怖い)。訳の分からない、チューブラリンの配線もある。ファイナル球はすべて撤去されているが、ドライバー球は残っていた。

改造した人間の技術レベルは低い。

ごちゃごちゃした配線

の拡大


上記のような状態なので、安全のため中高圧配線をトランスからカットして電源投入してみた。

・送受切り替えNG(リレー音せず)
・受信音せず
・VFO正常(ただし、ギアにバックラッシュ)
・PLL正常
・カウンタ正常
・トランスは高圧系も死んでいない
・IF/RFユニットは不明。

埃は以前修理したFT-102よりは少ないが、パネルのスイッチ類には接点復活材の痕跡かオイリーな感じ。高圧コンデンサよく見たらパンクしていた。電源投入前に高圧カットしておいて良かった。最悪、コンデンサが爆発することもある。まあ、VFO,Local,トランスやバリコンなどが取れれば部品取りでもペイするかとも思うが、まずはリストアを試みる。


まずは掃除

後々気持ちよくいじくりまわすために掃除は必須である。掃除により断線や調整ポイントのズレなどトラブルが起こることもあるので、まずは修理前に掃除だけしてしまう。フロントパネルを外し、前回の102同様水洗い。ツマミ類も1個1個磨き上げている。SW、VR類およびそのケーブルにオイリーな復活材が付いているので、ホーザンの「オーバーホールクリーナー」で洗い流す。かなりすっきり取れる。カウンタ、VFO、RFおよびIF基板、パンクした電解コンデンサを外し、露出したシャーシも掃除した。SW類と本体側の接続ケーブルは切れやすい(特に根本の半田部分が金属疲労で切れる)ので特に注意する。切れてしまった場合、すぐに戻せれば良いが、なんだか分からなくなってしまうと回路図とケーブルを参照する作業が必要となる。ケーブル本数が多いのでかなり面倒な作業だ。トランス付近の掃除は、前面パネルの掃除が終了してからにする。あまり一度に外すと、バラバラになってしまう。専用の作業卓がない場合、後かたづけの観点からいきなりバラバラにはしにくい。

パネルを外すと配線切れに要注意

今回はリアも外しました(こうなると完全なジャンク状態)後ろ前回修理の102(現用)


VFOメカ修理

バックラッシュは2組有るダブルギアの1つが殆どテンション無し状態であったことが原因だった。ギアメカを分解し、潤滑、テンションを与えて組み上げたところバックラッシュは無くなった。この部分はネジロックの状況から改造の痕跡はないので、出荷時からバックラッシュが有った可能性がある。しかし、102のVFOの発振は安定である。QRHが気になったことはない。VFOランプが1つ切れていたので、高輝度LEDに交換してみた。オリジナルに比べて色白で暗くなったが、このダイアルはそれほど使わないので問題ないこととする。どうせなら蛍光表示官のフィルタも変更して、白色表示にするのもクールかもしれない。最近のリグやオーディオの蛍光表示は白色に近いが、ピンク色のフィルタを管の前面につけるとあの感じになる。

パネルの再組み付け

SW類から延びるケーブルを切らないよう、気を使う作業だ。パネル周辺の修理はなるべくやりたくない作業だ。SW類の取り付けネジも数種類あるため、使い分けなくなはならない。特に注意するのが、送信スイッチもある左側の6連スイッチだ。ネジが長いと、スイッチのツマミがネジに当たり奥に入らなくなる。上段にある格納式のVR部分とと長さが微妙に違うので注意が必要だ。

ここまででパネルおよびシャシ前半部分の掃除は終わっているので、トランスを外し、シャシ後半部分の掃除を行う。ファイナルボックス内部はさほど汚れていないようなので、届く範囲ですす払いするにとどめる。

送受切り替え不良の修理

AF基板の電源落ちかと思ったが、電源は来ている。改造者の技術が信頼できないので、(高圧コンデンサパンクしているし)12Vラインに高圧を入れてこの系が死滅したかと思ったのだが、AFアンプは生きていた。

送受切り替えNGはリレードライブトランジスタ2SA496Yの破損であった。2SA496Yおよび互換表のトランジスタは店頭に無かったので、2SA1358とした。低圧のスイッチとして使うだけなので、hFE,Pc程度の定数だけ確認すれば何でもよい。2SA1358はピン配列も同じであるため、そのまま差し替えが出来る。

高圧電源回路の修理

片方のコンデンサはパンクしているので、両方NGと見なしてこれは無条件交換。同一品があるかと心配したが、同サイズ、同容量のブロックコンデンサが秋葉にあった。ただし1つ1800円もした。高い。コンデンサパンクの原因はダイオードが短絡モードで破損した可能性がある。こうなると、コンデンサに交流がかかるのでガンガン電流が流れてしまう。しかも電解コンは有極性なので、逆方向の電圧印可はコンデンサとしての機能を失わせるためますます損失が大きくなり、やがてガス圧力が増大して安全弁が開いてしまうのだ。もし、安全弁が機能しなければ、コンデンサ本体が破裂してしまい非常に危険だ。ダイオードは非常に安全面でも重要なので、全数交換とする。最近は10D何とかというダイオードが無いようなので、10D10相当である1N4007(1000V/1A)を使用した。ダイオード、特に樹脂モールドのダイオードを基板に立に挿入する場合、片方の足を180度近く曲げることになる。この時、ダイオード本体をつまんで足を曲げてはいけない。曲げる足の根本をラジペンでつまんで、本体にストレスをかけないように曲げなくてはならない。長期の信頼性に差異があると言われている。

高圧の通電は受信部の修理が完了した後とする。うっかり触ってしまうと非常に危険なためだ。長期間の安定性を見込んで、低圧部の電源コンデンサも交換しておいた。前回の修理同様、高圧部はエタノールで洗浄しておく。

リレーの交換

問題の多いリレーは問題有無にかかわらずなるべく交換してしまう。今よくてもいずれ問題が出てくると予想されるためだ。

G2E-184P   ¥270  DC5V DC12V

なおリレーは八重洲のサービスセンタから買うより、秋葉で入手した方が安い。

低圧電源ラインの修理

12Vの電源回路は生きていたため、配線の手直しですんだ。しかし、試しにパワートランジスタを交換してみた。特に意味はないが、オリジナルは入手困難なのでその代替えのためだ。RX24Vラインは受信時24Vとなる電源で、主にフロントエンドなどのK125の電源になっている。しかし、ここの電圧が30V程度になっており、送信時も30Vのままだ。これはRECT Bユニットの2SC496Yが導通モードで故障していた。同等品に交換。K125は死んでいなくて良かった。

壊れていなかったがパワトラ変更しました。斜めにしないとケミコンと干渉します。

中圧電源の修理

しかし、このリグはあちこちが壊れている。元オーナーがいかに素人技術者であったのかよくわかる。素人技術者がさわるとたいてい故障が進行するのだ。中圧電源はドライバーのプレート、ファイナルのスクリーンおよび両者のバイアス電源などから構成されるRECT Aユニットである。このユニットのファイナルスクリーンのフィルタ抵抗が焼けていた。これはおそらくファイナルのプレートキャップをはずして送信したに違いない。そうすることでファイナルを停止させようとしたのだろう。しかし、こうするとスクリーンがプレートになってしまい、スクリーンに異常な電流が流れてしまうのだ。抵抗を交換してRECT Aユニットの修理は完了。

ここで全ユニットを本体に組み付け、中高圧への給電をぜずに受信機能だけ回復に入る。中高圧は送信時にしか使わないので、受信時の調整時には危険防止の観点から給電しない方がよい。

IFの修理

これまでの修理で送受信切り替えは動作するが、全く受信できない。マーカも受信できないのだ。ちょっとズルして動作品のIF基板と交換すると受信できるのでIFが壊れていることは確定できた。さて問題のIFであるが、AFレベルをあげておき、信号経路にドライバなどを接触させた場合に発生するノイズで故障
場所を探知してみた。その結果、455KのIFで信号が途絶えていることが判明。その個所をテスタで調べるとダイオードスイッチが導通していない。基板を調べると、IFTの片方の足が浮いていた。これはパターンカットしてIFTのタップ位置を変更している個所のはんだブリッジが外れていたものだ。この他にもIFTのタップをパターンカットで変更している部分がある。後期タイプの基板ではカットせずにタップ変更されているので、製造時に修正した部分だろう。八重洲のリグの初期ロットにはこのような変更箇所が多い。

これで455Kは動作するが、まだ受信感度が異常に低い。ノイズ手法でさらにポイントを探すとIFのフロントアンプ出力部分まで信号が確認できた。ということはフロントのアンプがおかしいということだ。この部分をよく見ると。なんとFETが逆に取り付けられている。しかも、ゲートは半田ブリッジまでしている。素人作業だから仕方ないが、逆に取り付けるとは。先のIFTも製造時とは異なる半田フラックスがついているので、オーナーがいじった可能性が大きい。FETを手持ちの予備と交換し、受信機能は回復した。


スピーカ配線修理

ヘッドホンでは問題ないが、スピーカから音が出ない。これはスピーカへの配線が根本で断線していた。

送信回路修理

受信が可能となったら、送信部の修理にかかるため、中高圧電源の配線を行う。
高圧配線は特に念入りに確認してから通電する。ケミコンが破裂すると危険なためだ。

まずはチューンでRFプリ出力を確認。電力増幅回路の確認は最後に行う。次にCWモードを確認したところ、キーイングしていないのにキーダウン状態である。これはAFサイドトーン回路のダイオードがショートしていた。これはゲルマニウムスイッチダイオードとのことであるが、このようなダイオードは入手が難しいので手持ちのショットキーバリアダイオードと交換した。これで正常にキーイングでき、サイドトーンの発振も確認できた。手持ちのFMユニットをとりつけ、電話系の確認を行う。特に問題ないようだ。

修理中にプレートのカップリングコンデンサを破壊してしまったので、新品に交換し、ファイナル球として6146Wを2本取り付け、入力容量として16pFを取り付ける。この16pは後で160pであったことが判明し、丸一日なやむこととなるのだ。本来6146の入力は13pであるが、適当に買いだしたため、16pとなってしまった。

ここでダミーロードと通過電力計をとりつけ、電力増幅の確認に入った。新品のGE製6146Wはたまに軽いパコッという音とともに青紫の電光を放っていて驚いたが、数時間ヒーターを入れいたところそのような事象はなくなった。球は買ってからだいぶ経過しているので、今更販売店に文句もつけにくい。6146の定格をだいぶ越えたプレート電圧が印加されている点も原因の一つだろうが、新品の真空管はエージングするとゲッターが活性化されて真空度が上がると聞いたことがある。プレート電圧は無負荷時900V程度になっている。この電圧の感電は怖いので、電圧測定時はテストリードのマイナスをシャーシのねじ穴につっこみ、片手のみでプラスリードを操作するようにしている。両手に900Vは心臓に悪い。

チューンで送信したところ、3.5Mで100Wの出力を確認。しかし、同調時のプリセレクタ位置が受信と異なっている。7Mではこの差がさらに拡大。14Mでは出力が全くでなくなった。プレート電流をみると、プリセレクタをもっとも右にするとわずかに電流の増加が認められる。つまり、プリセレクタの共振が送受でずれているのだ。

丸一日なやんだあげく、原因を発見。なんと6146の入力容量としてとりつけた16Pが実は160Pだったのだ。このコンデンサの表示は160で店頭でも16Pの仕切になっていたが、160pFだった。最後のゼロは乗数ではなかったのだ。

コンデンサを交換したところ、ハイバンドでも出力を確認。中和もうまくとることができた。入力から考えると能率は50%程度であまりよくないが、この原因は1つはメーターで、カソード電流の指示値は真値より1割程度少ないことがわかっているのでそれを考えると6割である。これは電流シャント抵抗を調整すれば正確になるが、シャントの調整は面倒なのでそこまでしていない。そもそも、抵抗値を増やす方向に調整するのは困難だ。ちなみにプレート電圧も1割程度低く表示される。こちらは分圧抵抗を標準の5.6Mパラ(2.8M)から1.3Mのシリ(2.6M)に変更したところ、ほぼ正確になった。

ここで早速QSOしてレポートをもらったところ、変調もいいらしい。
どうにか完全ジャンクからは復活したようだ。

バリコンのユニバーサルカップリング交換

純正は白色だが、色以外は全く同一品。千石に売っている。丹念に探せば意外なものもあるようだ。

修理明細

修理明細を書くとこんな感じだろうか

RECT B トランジスタ故障=>同等品に交換
RECT B 高圧ダイオード全数交換
RECT B 低圧平滑コンデンサ交換
プレート電源平滑コンデンサパンク=>交換
RECT A 抵抗焼損=>交換
AF リレー駆動トランジスタ故障=>同等品に交換
AF ゲルマダイオード故障=>ショットキーに交換
IF 半田はずれ=>手直し
IF FET逆接続、半田ブリッジ=>交換、手直し
スピーカコード断線=>手直し
シャーシ配線の改造および切断箇所=>手直し
バリコンのユニバーサルカップリング割れ=>交換
リレー交換
ファイナル球6146W2本新規挿入(後にスパークNG品)
プレートカップリングコンデンサ交換(修理時にリード金属疲労で断線)
シャーシラグ板交換(復活剤?で汚損のため)
VFOギアメカ調整、ランプ交換
メーターランプ交換
各部掃除、調整

これほど故障個所が多いものも珍しい。メーカも修理拒否するわけだ。

修理後


6146Wスパーク(怖い)

その後チューン中にIC電流計が振り切れ、慌てて受信に戻したがヒューズが切れた。確認したところ6146Wがイカれていた。どうもベース付近のゲッターがプレートに接近しているため、ゲッターとプレート間でスパークし、ゲッターが吹き飛んで蒸発しガスとなったようだ。受信時でもどんどん電流が流れるので、ヒューズが切れてしまう。この球は2局と交信しただけで交換になってしまった。大損である。これは6146Wだからダメということではなく、ゲッターがベースにあってプレートに接近していることが原因のようだ。GEの球は6146Bでもこうなっているので、同じことが起こりうる。特に900VというB電圧は元々6146Bの定格を2割オーバーしているので、こういうこともあるのかもしれない。

現在シルバニアの6146Bに載せ換えた。これは別のジャンク102から取り外した品で、袴が錆びているが中身は若い。こちらはベースにゲッターが飛んでいないので、こちらの方がよい。GEの6146は信用できなくなった。見栄えはよいのだが...。

シフトVR不良

しばらく使っていると全く受信出来なくなったり、異常にキャリアポイントがずれた音になる。寒くなると発生するようだ。全く受信できなくなるのはIFがおかしいかと思ったが、この現象もシフトVRの接触不良だった。端子をベーク板に形成した抵抗体に取り付けているカシメが弱く、接触不良が発生。ラジペンでカシメを押さえたところ直ったようだ。VRはみなこのような作りなので、他のものがこうなってもおかしくない。市販製品に採用されているパネル部品は一般的な部品ではないので困る。最近は二重VRもオーディオ用でさえ一般的な部品ではないと聞いている。保守は部品が命だ。

その後、AF基板上のボリュームへの配線コネクタが接触不良になった。こういうやつは振動などで直るとかなりの期間再現しなかったりするので、なかなか見つけにくい。

AGC時定数NG

現用機として使っていると、故障修理時には気づかなかった細かい不良が見えてくる。SSBを受信していると他の102よりS/Nが悪い点が気になった。音声がガサゴソするのだ。これはSメータの動きでも明らかなのだが、AGC時定数が速すぎる。音声の小音部で素早くゲインが上がるためにノイズが浮かび上がってしまう。時定数はCR部品で決定されており、回路を見るとコンデンサが放電する時間がAGCのリリース時間を決めている。時定数がおかしいのはCかRがおかしいということになる。しかし、CもRも取り外して単体で測定すると何ら問題ない。Rも正常、Cの容量も正常だし、抵抗レンジで計測すると最終的に無限大になる(=リークがない)。従って全くの正常のようなのだ。しかし、部品を再度戻すとやはりダメ。回路の他の部分を見ても理屈の上では時定数に影響はないはず。こうなると良品と判断した部品も疑うしかない。だまされたと思いコンデンサを交換したところ直ったのである。このコンデンサはタンタルである。どのようにNGなのか今でもわからない。おそらく、リーク抵抗が電圧によって違うなど、半導体のような動作をしていた可能性がある。やっかいな部品だ。

この102でイタリアと交信(21M)。ジャンク修理で遠方通信が出来るというのもなかなかおもしろい。アマ無線の醍醐味だろう。


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