TS-830メンテナンス


はじめに

仕事の都合でホームQTHからの運用を準備しています。
もちろんFT-102も使う予定ですが、102のライバルでもあり評判が高いTS-830は一度使ってみたいリグであり、いつものごとくオク落しました。

無線の造詣があまりない方の出品のようで、重要なアピールポイントである「フィルターフルオプション」が謳われていませんでした。
実にもったいないですが、当方にはラッキーでした。
アルミ削りだしメインノブKB-1がついている点でも「フルオプション」です。(これは外見でわかる)

入手時の状態

パネルの小キズ、ケースに若干のサビが出ていますが、内部のホコリ等は少なく、製造から30年超えを考えると上物と思います。
しかしながら、以下のような不具合がありました。

・送受切り替え後感度不安定 (ANTリレー接点劣化) → 接点磨き
・AGCがSLOWにならない (AGCロータリSW接点不良) → SWばらして接点磨き 
・特定のバンド(特に14,21)で感度が低く、 バンドSWを微妙に動かすと感度UP → バンドSW修理

バンドSWの修理

バンドSWの接触不良が明らかなのですが、 このままではメンテナンス困難です。
RFユニットを摘出し、バンドSWを完全に外すことにします。
電動式の半田除去ツールがあると簡単に外せます。

問題のバンドSWウェハー

1.バンドデータ用
2.ANT回路
3.上記のローバンド追加コンデンサ
4.送受共用部分(受信プリアンプ出力側、送信ドライブ回路入力側)
5.上記のローバンド追加コンデンサ
6.送信ドライブ回路出力側
7.上記のローバンド追加コンデンサ

リベットが緩く、ステータ側接点がぐらついて基板と接触不良になっている。
緩いのは基板ピンに近く、曲げられている接点のリベットのみ。たぶん曲げた際に緩んだと思われます。

ビス(TS-830のケース固定ねじ)を台座に、叩いてカシメ。台座なしで叩くと、ボードを割る虞がある。
ポンチにしているのは、折れた超硬ドリルビット。

 叩きすぎても壊す原因になるので、ほどほどに。割ると補修はないですから。

接点洗浄剤(リレークリーナー)で洗浄の後、接点不良の予防としてナノカーボンを薄く塗布し組み付け。
ナノカーボンは可動接点に対してかなり効きます。

調整

DLした英文サービスマニュアル(SM)に従い、主要な調整を実施。
大きなズレは無かったように思います。

Sメータ特性

SMによれば、+8dBuの時にS1、+40dBuにてS9になるよう調整、とあります。
等間隔とすれば4dB/Sなのですが、実際には下記のように、S1側は1.5dB/S、S9側は7dB/S程度と等間隔になりません。

S レベル[dBu]
1 8(調整ポイント)
2 9.5
3 10.9
4 12.4
5 15.1
6 19.2
7 25
8 33
9 40(調整ポイント)
+20 59
+40 77

TS-830のSメータは正確だ、という情報もあるので、さらなる調整の余地がありそう。
...JR3TGSさんのサイトhttp://www.eonet.ne.jp/~jr3tgs/7cw10wtrxagc.htmlに参考になる情報を見つけました。
TS-830のAGCは3SK73の第2ゲート電圧で制御していますが、第1ゲート電圧で特性がかなり変わっています。


上図はJR3TGSさんのサイトより借用

結局のところ、入力信号レベルに対するAGC電圧は、AGCアンプの特性そのもの(実際には逆特性)だと思います。
FETはバラツキが大きいので、個体誤差も結構大きいと思われます。

信号レベルを落とすと(10dBu、S3程度)、Sメータが多少ふらついてます。
入力レベルに対するAGC電圧変化が小さい(=AGCアンプのゲイン変化大)ので、ふらつきやすい方向です。
AGC回路の電解コン劣化も考えられると思います。

とりあえず、普通に使えるようにはなりましたが、折を見て 今後もメンテナンスは続きます。。。

スプリアス

(2020/02/08)
7MHz CW  外付け 60dB ATT
ロードを抜ききって、IPディップを取った「軽い状態」、約90W、第2高調波 -55dBc。
-50dBcで新スプリアス規定クリアらしいからなるほどOKなわけだ。
第3高調波は-80dBc、7MHzの隣に見えるのはIFの8.6MHz。
7MHzと8.6MHzの混変調1.6MHzなどもみられるがいずれも微弱。

ゼロスパンCW波形


[戻る]

Created: 2015/01/19
Update: 2020/02/08